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RUSI Japanが開設されて3年がたちました。

この間、日本と英国の安全保障関係は静かに、しかし、着実に進展してきました。2012年、日英は防衛協定を締結し、それをうけて、防衛装備の共同開発の方針が打ち出され、日英同盟解消以来100年ぶりに、英国海軍の連絡将校が横須賀に着任したり、ソマリア沖の海賊対策の洋上作戦で、日英が共同で指揮をとるなど、日英関係は新しい段階を迎えています。

この背景には、米国の国際秩序への関与が弱まっていることがあります。オバマ政権は、「リバランス」と称して、軍事力の中心をこれまでの欧州からアジアへシフトさせるとしていますが、その動きはそれほど顕著なものではありません。加えて、オバマ大統領は2013年、米国が「世界の警察官」の座から降りることを明確に宣言しました。その直後、中国は東シナ海上空に防空識別圏を設置、南シナ海では、周辺国と領有権をめぐって対立している南沙諸島の島々に航空施設の建設を強行しました。また、欧州では、ロシアがウクライナの領土であるクリミア半島を事実上併合し、さらに、中東ではIS(イスラム国)がテロ活動を活発化させ、シリアから逃れた難民が大挙して、欧州に押し寄せています。つまり、米国の非関与の姿勢によって、世界のパワーバランスが乱れ、国際情勢は不安定になりつつあるのです。

これに対応して、日本はいま、ネットワーク型の同盟と言われる、新しい安全保障の枠組みを構築しようとしています。これは、日本がこれまで通り、日米同盟を基盤にしながらも、これを補強するために、ユーラシア周辺の諸国と様々な安全保障関係を築き上げようというものです。現在、日本とオーストラリア、東南アジア諸国、インドなどと、安全保障上の関係強化が進んでいますが、とりわけ、英国とは、防衛協力や秘密情報保護の協定を締結したほか、日英の外務・防衛担当閣僚協議を毎年実施するようになり、今や、日英関係は、21世紀型の新しい同盟(New Type of Alliance)に発展しつつあります。

20世紀後半、世界には二つの大きな同盟が存在しました。一つは、米英を中心とした汎大西洋(Trans Atlantic)同盟、もう一つは、日米を中心とした汎太平洋(Trans Pacific)同盟です。しかし、冷戦後の世界をみると、朝鮮半島、南シナ海、南アジア、中東など、世界の不安定要素のほとんどが、ユーラシア大陸の南の地域に集中していることがわかります。ところが、この地域をカバーする大国同士の汎ユーラシア(Trans Eurasia)同盟は存在していません。日本が進めるネットワーク型の同盟の構築は、将来、この汎ユーラシア(Trans Eurasia)同盟に発展していく可能性を秘めた戦略であり、それが実現すれば、アジア地域のパワーバランスはより安定したものになるでしょう。そして、その同盟のコアになりうるものは、日英をおいて他にはありません。

RUSI Japanは、この新しい段階に入った日英関係を推進するために、まず、これまで長きにわたって米国的な視点に席巻されてきた日本の安全保障論議に、欧州的視点という新風を吹き込みたいと考えています。そして、そのための情報発信の場として、このウェブサイトを積極的に活用していく方針です。

RUSI Japanは、日英の「新たな同盟」(New Type of Alliance)の創生を目指します。

RUSI Japan 理事長
秋元千明